久御山町議会の田口浩嗣議員が令和2年度の政務活動費(以下「政務費」)を7月12日付けで一部返還していたことがわかった。返還対象となったのは広報紙の印刷・頒布代99,716円。
令和2年12月頃、田口議員は「活動報告 田口こうじVol.9」の制作を開始、翌年1月初旬に業者委託により久御山町内に7,774部を頒布した。3月には「令和2年度政務活動費実績報告書」および添付書類を提出し、その後、広報紙の印刷・頒布代を受給した。
久御山町議会では、他の議会同様に政務費を使用した広報紙の印刷・頒布は認めれている。しかしながら、公金を使用するため、おのずと広報紙の表現内容についは制限が生まれることは当然である。政務費を使用して広報紙を作成・頒布するのであれば、議会での質疑・質問・それにたいする答弁・討論・視察報告・町政の課題・政策提言・要望活動報告・議会運営などの紹介に限定され、個人的な事項や選挙活動・政党活動について記載することは許されない。いやしくも公金を使用している以上は、私物化することは許されないし、私物化ととられかねない行為は厳に慎むべきである。
しかるに、田口議員による本件広報紙は、田口議員が腰痛を患ったこと、町長選挙で当選した陣営の選挙対策本部長を務めたことなどのあいさつ文が記載されている。さらに町長選挙のときの写真も掲載している。これらは、政務活動とは無関係な第三者の選挙活動や田口議員の個人的な事項に関する記載であり、政務費を支出して作成する広報紙としては、極めて不適切であり、違法性が強く疑われる。
町長選挙の記載や写真が…
さらに本件広報紙は、表面上部に「田口こうじ」と議員の通称名が大書きされており、その右側には本人の写真が掲載されているため、発行主体が明確になっている。議員名や写真は、議員の基本情報といえるため掲載することは問題ないが、議員名や写真を過度に大きなものとなっていたり、自己紹介に過大な面積があれば議員個人の周知および宣伝をするものと評価される。
表面下部には、略歴として年齢、家族構成、最終学歴、本職、現職、経歴を相当な面積を使用して掲載している。現在の議会役職を紹介する程度であれば問題ないと考えるが、消防団の副団長や各種地域団体の理事・委員を務めていることは政務活動とは無関係である。地域活動に鋭意取り組んでいることを周知および宣伝することが目的と評価することができる。
他にも「JSS京都21の会」(園崎弘道代表)の委員という表示もなされているが、これは自由民主党の議員によって構成されている政治団体である。そのため政党活動・政治団体活動に該当する表示である。また過去にPTAの会長や自治会の副会長などを務めていたことを列挙しているがこれも政務活動とは無関係である。
議員の宣伝ととられかねない過大な自己紹介
よって表面下部の議員の自己紹介表示は、過大に大きな面積を使用しており、政務活動との合理的関連性も認められない。議員個人の周知および宣伝をするもの評価されるため、政務費を充当した広報紙として極めて不適切であり、違法性も強く疑われる。
参考資料: 大阪高判令和元年8月28日.pdf (22.63MB)(最高裁令和2年3月24日上告棄却決定により確定)
裏面の上部右側には、田口議員が現内閣総理大臣・菅義偉氏(当時は官房長官)と握手しているツーショット写真を掲載している。
田口議員の令和元年6月2日付けブログによると、同日にホテルグランヴィアで開催された「衆議院議員木村やよいを囲む会2019」という政治資金パーティーと思われる行事で撮影したものとなっている。そうすると本件写真は、政務活動とはまったく無関係な政党活動の写真であると認めれられる。
議会広報紙『議会だより くみやま』では代表・一般質問のページでは質問をおこなった議員本人が原稿を作成している。質問内容と関連した画像を掲載することが認められているが、質問とは無関係な写真を掲載することは当然認められていない。
議会広報紙と比較すると議員または会派が発行する広報紙(政務費を充当するもの)では裁量権は広くなるかもしれないが、裏面に記載された文面との関連性がまったく認められない現内閣総理大臣とのツーショット写真を掲載することは、議会広報紙と同様に許されないと解するべきである。
現内閣総理大臣とのツーショット写真を掲載することによって自分を大きく見せ(ハロー効果)、国(総理大臣)との「太いパイプ」を周知・宣伝することが目的だと評価されるものであるから、政務費を充当した広報紙として極めて不適切であり、違法性も強く疑われる。
政務費を使用した広報紙に掲載する必要がまったくない写真である
以上のとおりであるから、田口議員は、政務費で作成・頒布した本件広報紙を一部私物化していたと言わざるを得ない。返還するのは至極当然である。
田口議員は、ブログで「交付辞退の理由は、令和2年度の政務活動費において、印刷物などの広報広聴費を、会派として改めて精査をし、政務活動と政治活動との区別がつきにくく、住民の皆さまの誤解を招いたり、不信感をもたれることになりかねないと判断いたしました。つきましては、政務活動費の使途の透明性を確保するためにも、このたび、広報広聴費にかかる経費を取り下げすることが適当と考え、修正報告いたします。」などと書いている。
一時的ではあるものの、公金を法律上の原因なく利益を受けた(民法703条・不当利得)疑いが強いにもかかわらず、住民に対して一言の謝罪の言葉がないのは、いかがなものであろうか。
返還対象となった広報紙の印刷代
返還対象となった広報紙の頒布代
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2021年7月21日
(久御山ジャーナル主筆 芦田祐介)