久御山町議会で、議長、副議長および監査委員等の任期を2年とすることを全会派が確認した文書を作成し、議会事務局が公文書として保管していたことが、久御山ジャーナルの情報公開請求によりわかった。
確認書は令和5年5月17日付で、「議長、副議長、監査委員等の任期について」と題する文書。文書によると、同年5月10日に開催された会派代表者会議で協議した結果、「任期は2年とすることで全員一致をもって了解した」と記載されている。
また、「この決定を証するため、各会派の代表者が署名押印する」とされ、議員懇談会座長、副座長および各会派代表者が署名捺印(押印)している。
地方自治法第103条第2項は、議長および副議長の任期を議員の任期と同じ4年と定めている。一方、全国の地方議会では慣例または申し合わせにより1年または2年程度で交代する「短期交代制」が行われている例も少なくない。
地方自治法が議長の任期を4年としている趣旨について東京大学名誉教授(行政法)で元最高裁判所判事の宇賀克也氏は『地方自治法概説』(有斐閣)の中で
「議長の地位の安定を図ることによって、議長が安んじて公正中立に職務を遂行することができるようにするためのものである」(284頁)
と解説している。
つまり、議長が会派や多数派の意向に左右されることなく、公正中立な立場で議会運営を行えるよう、法は4年の任期を保障しているのである(※1)。
このような法の趣旨に基づき、議長短期交代制については、地方自治法の解説書や議会実務書の多くが否定的な見解を示している。
議会運営の実務書である『議員必携』(全国町村議会議長会編、学陽書房)は、
「任期中の議長・副議長の短期交代の申し合わせを行うことは、法103条2項の趣旨に反するので、現に慎むべきである」(86頁)
としている。『議員必携』は全国町村議会議長会が示す標準的な実務解釈であり、同会の名において著書が発行されている以上は、同会の公式見解又はそれに準ずる見解と捉えてよいであろう。
また『逐条地方自治法』(佐藤文俊著、学陽書房)は
「議長及び副議長を1年交代等にする場合が多いが、本条2項の規定がある以上、このことを会議規則に規定することはできない。したがって、申し合わせにより、本人の辞職による交代を行うほかはないが、このような短期交代制は法の趣旨からして適当ではない」(365頁)
と解説している。
さらに『地方自治法講義』(猪野積著、第一法規)は、
「多くの地方公共団体の議会で、慣例的に1年ないし2年の短期で議長・副議長の辞職による交代が行われている。このような慣例は、議会の安定的な運営や議会の執行部に対する地位の強化という観点からみて、適切なものとはいえず、自治法103条2項の本来の姿に是正されるべきものである」(154頁)
と議長短期交代制を厳しく批判している。
これらの文献はいずれも、上述した地方自治法が定める4年任期の趣旨を重視し、慣例・申し合わせによる議長短期交代制に否定的な見解を示している。
一方、議長短期交代制を支持する側は、議長職を特定の議員に固定しないことで権限の集中を防ぎ、より多くの議員に議長経験を積む機会を与えることができると主張している(※2)。
いずれにしても学説では、議長短期交代制は法の趣旨に反するとしており、学説と実際の地方議会の運用実態に大きな乖離(かいり)があるといえる。
久御山町議会においても、議長等の任期を2年とする法の趣旨に反する確認書が作成され、それを議会事務局が公文書として保管していたことは、重い事実である(※3)。なぜなら、単なる慣例や口頭の申し合わせではなく、全会派代表者が署名押印した確認書として文書化されていた点は「紳士協定」のレベルを超えているためである。
長年続いてきた議会人事の慣行について、改めて議論が求められそうだ。
※1 昭和26年1月18日の行政実例は「議会の議決によって、議長及び副議長の職を失わせる旨議会の会議規則をもって規定することは、第103条第2項の規定に違反する」としている。これは、本文にも記載したとおり議長の地位を安定させることにより中立公正な職務執行を担保するためである。そのため、しばしば地方議会では議長の不信任決議や辞職勧告決議が可決がされることがあるが法的拘束力はない。
※2 議長短期交代制を取る地方議会側の主張であり、本紙が調べた限り、議長短期交代制を支持・擁護する学説は見つけることはできなかった。
※3 本紙芦田も確認書への署名を求められたが、地方自治法の趣旨に反する確認書には署名できないと拒否した。
令和5年5月17日付け確認書(議長、副議長、監査委員等の任期について).pdf (0.07MB)
本件記事の客観的事実を整理する下記のとおりである。
■地方自治法は議長の任期を議員の任期(4年間)と定めている。
■主要文献は議長短期交代制は法の趣旨に反するとしている。
■それにもかかわらず全会派が「議長2年任期」の確認書に署名しており、それを議会事務局が保管していた。
2026年6月21日配信
久御山ジャーナル編集部